手帳その他

疾中詩篇
兄妹像手帳
雨ニモマケズ手帳

疾中詩篇

疾中詩篇

病床
眼にて云ふ
〔ひるすぎの三時となれば〕
〔熱たち胸もくらけれど〕
〔わが胸いまは青じろき〕
熱またあり
〔そのうす青き玻璃の器に〕
名声
〔春来るともなほわれの〕
〔今宵南の風吹けば〕
〔熱とあえぎをうつゝなみ〕
〔わが胸はいまや蝕み〕
S博士に
〔美しき夕陽の色なして〕
〔まどろみ過ぐる百年は〕
〔疾いま革まり来て〕
〔手は熱く足はなゆれど〕
〔あゝ今日ここに果てんとや〕
〔その恐ろしい黒雲が〕
〔丁丁丁丁丁〕
〔眠らう眠らうとあせりながら〕
〔風がおもてで呼んでゐる〕
〔胸はいま〕
〔こんなにも切なく〕
〔まなこをひらけば四月の風が〕
病中
〔そしてわたくしはまもなく死ぬのだらう〕
(一九二九年二月)
肺炎

兄妹像手帳

兄妹像手帳

〔鱗松のこずゑ氷雲にめぐり〕
小作調停官
県技師の秋稲に対するレシタティヴ
〔丘々はいまし鋳型を出でしさまして〕
〔盆地をめぐる山くらく〕
〔topazのそらはうごかず〕
〔白く倒れし萱の間を〕
〔わが雲に関心し〕
〔われらぞやがて泯ぶべき〕
〔ねむのきくもれる窓をすぎ〕
〔かくばかり天椀すみて〕
医院
〔樺と楢との林のなかに〕
〔黒緑の森のひまびま〕
〔見よ桜には〕
〔よく描きよくうたふもの〕
〔鎧窓おろしたる〕
〔気圏ときに海のごときことあり〕
〔徒刑の囚の孫なるや〕
〔九月なかばとなりて〕
〔高圧線は こともなく〕
〔苹果青に熟し〕
〔南方に汽車いたるにつれて〕
〔妹は哭き〕
〔かくてぞわがおもて〕
〔物書けば秋のベンチの朝露や〕
〔融鉄よりの陰極線の〕
〔さあれ十月イーハトーブは〕

雨ニモマケズ手帳

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雨ニモマケズ
10月廿日